香川県の図書館(15K)


入力に使用した資料
 資料名 「みんなの図書館」2001年4月号より
 編集者 図書館問題研究会
 発行者 同上
 発行年 平成13年3月10日

入力者:棚橋満雄,川崎正視,森澤福美,松崎洋祐,東條文規
校正者:同上
登録日:2001年8月21日


「香川県の図書館」 

香川県の図書館は公共、学校、大学がそれぞれ活動を強めており、図書館づくり住民運
動、学校図書館に人を置く運動がねばり強く続けられている。またこれらの活動と不即不
離の立場で香川県子ども文庫連絡会が活発な活動を展開している。香川県図書館学会もま
たこれらの活動と結びついて香川県の図書館学の伝統を生かそうとしている。そしてそれ
らの全体が香川県の図書館運動を形成している。

1. 公共図書館
ここでは図書館づくり住民運動を含めた公共図書館について述べる。県内5市38町の
公共図書館の設置率は市立100%、町立44.7%であるが、「日本の図書館」の統計
では町立37%となっている。それは1997年に開館した三木町文化交流プラザと19
98年に開館したライブラリーうたづがいずれもその経営が財団に委託されており、図書
館と見なされていないからである。また、大野原町立勤労青少年ホームの図書室も図書館
と見なされていないのである。だが、これらの3館は実体として図書館であり、従来の町
立図書館より利用率は高いのである。なかでもライブラリーうたづは住民一人あたり貸出
冊数が10.62冊と県内で最高の利用率を示している。インターネットの利用も活発で
6台のパソコンがフル稼働している状況である。
高松市図書館は1992年、香川県立図書館は1993年に新館が開館したが、両図書
館ともその設計と資料費に意欲を見せ、住民の利用は旧館時代をはるかに上回っている。
なかでも高松市図書館は1999年度の貸出冊数が210万冊を越え、市民一人あたり貸
出冊数は6.3冊となり、県庁所在地の市立図書館では佐賀市立に次いで高い利用を示し
ている。資料費も両館は1億円を超えていたが近年次第に削減されていることは残念であ
る。香川県立図書館は今年度より協力貸出の市町村負担分を廃止することにした。また、
県立からの直接貸出の資料を市町村の図書館・公民館を通じて、本年4月から返却できる
ということになった。さらに県立の資料を市町村図書館を通じて利用できるだけでなく、
公民館を通じても利用できるということになった。これには公民館側の協力が必要である
と思われるが。インターネットへの取り組みを見ても書誌情報の検索、レファレンスの受
付等県立は意欲的な活動を強めている。
新館設置の動きも強まろうとしている。図書館づくり住民運動について見ると、志度町、
綾歌町、土庄町でねばり強い運動が続けられている。このうち土庄町では2000年度に
図書館建設検討委員会の新図書館の基本計画がまとめられ今年度は設計費が計上される見
通しである。土庄町では土庄町立中央図書館友の会が70人を越える利用者によって組織
され活発な活動を展開している。志度町では数年前から志度町女性会議による図書館づく
り運動が進められてきていた。しかし志度町の属する大川郡西部5町の合併問題が起こり、
図書館設置が町の課題から消え去る危険が出てきたが、それに対して昨年「志度町に図書
館つくろう会」が結成され、「合併前に図書館をつくって下さい。」という要求を中心と
する大規模な署名運動が行われ、その結果旧役場を図書館として再生させる試みが緒につ
こうとしているところである。綾歌町でも昨年ねばり強い運動の中で図書館建設検討委員
会の発足を見た。1月16,17日に行われた日本図書館協会主催の「議員のための図書
館づくりセミナー」には綾歌町の刎田鑛造議員が参加しその感想を赤旗1月26日付けに
発表されている。
高瀬町ではすでに新館の設計が終わり、町財政が好転次第に新図書館をつくることにな
っている。山本町では今秋公民館と併設の町立図書館が開館する予定だといわれている。
さらに大川郡西部5町の一つである長尾町でも図書館設置を決定したと報ぜられている。
三豊郡の三野町、高瀬町、豊中町の三つの図書館では三館が協力して児童サービス等の研
修会が毎年行われている。
なお、香川県では公共図書館に利用者登録していれば、県内の他の公共図書館でも図書
の貸し出しが出来る制度が、あることを付け加えておきます。

2. 学校図書館の充実と学校図書館指導員の配置
高松市には小学校が41校、中学校が18校ある。高松市図書館が1992年に新館を
開館し貸出を大幅に増やしていた中で、学校図書館は所蔵の本も古くて少なく、図書室に
は昼間鍵がかかっているのが一般的な状況であった。隣県の岡山市の活発な学校図書館の
活動の状況は香川県にも影響を与えていた。1993年に国から学校図書館整備5カ年計
画が示されたのを機会に、高松市教育委員会では、学校図書館実体状況調査を実施し、学
校図書館図書標準を目標に1994年度から5カ年をかけて図書整備に取り組んだ。19
94年度の予算は前年度の2,184万円から8,092万円に一気に3.7倍に増額さ
れた。学校図書館担当の教員への研修も同時に行われ、図書の発注、選択のあり方を変え
ていくことになった。予算の急増は教育現場で喜ばれた反面、担当者の負担が増えること
となった。
1998年度に5カ年計画は終わったが、学校図書館の蔵書冊数は平成5年度に比べ、
小学校で1.07倍の247,952冊、中学校で1.46倍の182,949冊となっ
ていた。この結果古い本の除籍が進み、必要な参考図書の整備も進んだ。学校図書館の書
架はかなり魅力のあるものとなった。以後、予算も5カ年計画以前のほぼ2倍の金額が確
保されるようになった。
学校図書館への人の配置の問題では、1996年度に2人の非常勤嘱託職員(職名は学
校図書館指導員)が学校に派遣されることになり、以後毎年2人づつ増員され2000年
度では10名の学校図書館指導員が配置されている。これらの指導員は週に2日勤務する
のが2校、1日勤務が1校で一人で3校を担当している。現在約2分の1の30校に学校
図書館指導員が配置されている。これらの指導員は公共図書館、学校図書館担当の経験の
ある人が採用されており、派遣された学校では学校図書館を利用した授業や利用促進のた
めの行事にも取り組んで教員や保護者から大変喜ばれている。特に子どもたちはテストを
しない先生として歓迎しているといわれている。学校図書館指導員の配置をきっかけとし
て学校図書館ボランティアが動き出した学校も出ている。香川県では司書教諭の配置は2
002年度からとなっており、今後司書教諭との担当分野の調整、総合学習へどう取り組
むかが課題として提起されている。

3. 高等学校図書館の状況
香川県には、県立34校・市立1校・私立10校がある。県立高校においては、一部小
規模校においては臨時職であるが、図書館専任として司書が配置されている。学校司書た
ちは、県下を4つのブロックにわけて、知識の向上と司書の連携を目的とした自主的な学
習会を月1回開いている。生徒数の1校平均は800名、蔵書数は2万冊前後が多い。図
書費は1校100万円程度であり、生徒数の減少に加え、厳しい予算で年間増加冊数も少
なくなっている。香川県では、司書教諭の配置が2002年度から配置されることになっ
ており、12学級以上を有する高校図書館は全てが対象になるが、現在、高校図書館部会
において、司書教諭と司書の職務分担についての研究委員会が発足し研究が進められてい
るところである。施設・設備面では、コンピュータの設置が全体の3分の1であり、貸し
出し等効果的に利用しているのは6校程度である。コンピュータによる蔵書管理が進行中
であるが、各高校での管理ソフトがまちまちで、統一されていないという問題が浮かび上
がっている。また、専門職としての司書の研修の機会が余りにも少なく、一部の司書は県
外での自費研修に参加している状況であり、各司書の意識の向上と研修の機会を多く求め
て行きたい。また、2003年度から始まる「総合的な学習の時間」において図書館が果
たす役割が大きくなると、より一層図書館の充実と教科学習に活かせる図書館運営か求め
られている。

4. 「学校図書館を考える会・丸亀」と「本があって人がいる学校図書館を願う会
(高松)」の活動
前述の高松市の学校図書館の充実と発展と結びついて、上記二つの会の活動が前者は1
995年に、後者は1997年に始まった。この運動は1991年香川県文庫連の皆さん
が、岡山市で開かれた「学校図書館に司書をおこうの集い‘91」に参加したことから、
1993年に香川県下の小学校全校へのアンケート調査を実施し、さらに1994年パッ
チワークの協力を得て丸亀市で行った「学校図書館を考える集い」(講師、平湯文夫先生)
等の活動を土台として発足したものである。「学校図書館を考える会・丸亀」は、啓蒙的
な学習活動を続けながら、会報「風・学校来ぶらり」を広く配布し、他方行政、議会への
働きかけを強めながら活動を続けており、「風・学校来ぶらり」は最近号で23号を数え
ている。また、一昨年末には、市議会に丸亀市の全校に学校司書を配置するようにとの請
願を行い、市議会は満場一致での請願を採択した。一方「本があって人がいる学校図書館
を願う会」は香川県文庫連と協力して、毎年高松市で「学校図書館を考える集い」を行っ
てきたが、参加者は毎年増加し、昨年の集い(講師、赤木かん子さん)の参加者は、17
0人余に達している。これらの活動は、高松市の学校図書館指導員の活動を支え、運動を
更に発展させて行こうとしている。

5. 香川県文庫連の活動
香川県文庫連、正式名称は香川県子ども文庫連絡会であり、1882年4月に発足して
いる。今年5月27日、伊藤忠記念財団の助成金120万円を得て文庫連20周年の記念
行事を高松城内の披雲閣を借りきって行うことにしている。親子読書・地域文庫全国連絡
会に団体参加しており、2年に一度の全国連絡会の交流会には代表を派遣してきた。当初
毎月一回の定例会を県立図書館でもっていたが、参加団体が増え、地元での活動が活発に
なってきたので現在では年4回の交流会を県立図書館で行っている。当初、文庫に来る子
ども達への本の貸し出しを中心に活動が行われていたが、少子化の進行と他方での公共図
書館の増加という中で、現在では公共図書館における児童サービスの一環として、お話し
会や読み聞かせの活動を中心として行っている。また、学校・幼稚園・保育所・老人ホー
ム等へのお話し会の出前活動も活発に行われており、その活動状況は毎月発行されている
文庫連の会報で報告されている。香川県の公共図書館における児童サービスは文庫連によ
って大きく支えられていると言える。
文庫連は公共図書館の児童サービスに関わるだけでなく、公共図書館の設立にも積極的
に参加してきた。高松市の新図書館建設に当たっては「図書館を考える会」を作って住民
の意見の反映に努めた。古い図書館が松島分館として残され、全域サービスへの第一歩が
踏み出されたこと「考える会」は積極的な寄与をしてきた。国分寺町立図書館の設置に当
たっても文庫連の仲間が、大きな役割を果たしている。現在、志度町と綾歌町で図書館づ
くりが進められているが、文庫連はこれらの活動に力強い支持を与えている。これらの文
庫連の活動を支えているものは毎月定期的に発行されている会報であって、会報の存在は
文庫連だけでなく、県下の文化運動と図書館運動の力となっている。

6. 大学図書館の状況
1949年に設置された香川大学、1959年の四国学院大に始まり、1998年に新
築された地上5階・地下2階建て延べ床面積13,315㎡の徳島文理大学香川校図書館
まで、国立4校・私立6校に大学・短期大学・高等専門学校の図書館がある。図書館の一
般開放も進んでおり、もっと多くの学外利用者をと呼びかけている。また、四国学院大学
図書館と善通寺市立図書館には、画期的な相互協力協定が締結されている。

7. 香川県図書館学会
1985年4月に、居石正文元高松市立図書館長を会長に、熊野勝祥氏、東條文規氏ら
によって発足した。椎名六郎元県立図書館長を中心として公共図書館・学校図書館をリー
ドした「香川学派」の流れを引き継ぎ、県下の公立・大学・学校図書館員や図書館に関心
を寄せる文庫関係者等が館種を越えて交流しており、全国的に見ても、ユニークな存在と
いえる。会員の個人研究発表の場、共同研究テーマについて問題研究の深化を図る場とし
て、年2回研究発表会を開き、主にその結果を年二回発行の「香川県図書館学会会報」に
掲載している。学会からの刊行図書としては、居石正文著「図書館学研究要録」(198
5)、居石正文・熊野勝祥共著「新図書館学要論」(1988)、熊野勝祥著「香川県図
書館史」(1994)等があり、「新図書館学要論」は地元大学の図書館学の教科書とし
て使われていた。                 図書館問題研究会香川支部編